選手まで数メートル。テーガンゼーで観たバイエルン

·

パブロヴィッチのサイン入りユニフォーム

ドイツへ来た理由の一つは、バイエルン・ミュンヘンを現地で応援することだった。

しかし、渡独してからまだアリアンツ・アレーナで公式戦を観戦する機会はなかった。

渡独してすぐにワールドカップが始まり、その後はオフシーズンに入ったため、バイエルンの公式戦自体が行われていなかったからだ。

そんな私にとって、ドイツワーホリ最初の現地観戦となったのが、テーガンゼーで行われたFC Rottach-Egernとの親善試合だった。

結果は15対0。

試合としては、バイエルンが相手を圧倒する展開だった。

ただ、私にとっては試合結果以上に忘れられない一日になった。

選手との距離が近い、小さな町のグラウンド。

試合後には、パブロヴィッチが私のユニフォームに気づき、まっすぐこちらへ歩いてきた。

アリアンツ・アレーナとはまったく違う形で、私のバイエルン観戦生活が始まった。

試合の3日前、まずはチケットを買いに行く

この試合で最初の難関となったのが、チケットの購入だった。

現在、バイエルンの試合チケットは基本的にアプリで管理されている。

しかし、この親善試合のチケットはオンラインで購入できなかった。

試合の3日前、現地で14時から販売されるという。

チケットの総数は約2500枚で、一人4枚まで購入可能。

確実に手に入れたかった私は、販売開始の2時間前、12時頃に着くように現地へ向かった。

「2時間前なら、さすがに大丈夫やろ」

そう思っていた。

しかし、到着すると、すでに私の前には200人から300人ほどが並んでいた。

一人4枚まで買えることを考えると、少し不安になる人数だった。

販売場所は、小さな木の小屋。

初めて行く人には少し分かりにくいかもしれない。

ただ、当日は多くの人が列を作っていたので、近くまで行けばすぐに分かると思う。

ビールを飲みながら待つ2時間

販売開始まで、約2時間。

普通なら長く感じそうだが、現地ではビールを飲みながら待つことができた。

ドイツの自然に囲まれた場所で、バイエルンのチケットを買うために、昼からビールを飲みながら列に並ぶ。

それだけでも、すでに楽しかった。

周りにもバイエルンのユニフォームを着た人が多く、試合はまだ数日先なのに、会場にはすでにサッカーの日のような空気があった。

気づけば2時間はあっという間に過ぎ、無事にチケットを購入することができた。

価格は大人12ユーロ。

子どもは、たしか7ユーロだったと思う。

手渡されたのは、今では珍しくなった紙のチケットだった。

普段のバイエルンのチケットはアプリで表示するため、紙のチケットを手にする機会はほとんどない。

昔ながらの紙のチケットを見た瞬間、懐かしさと同時に、

「本当にこの試合を観に行けるんや」

という実感が湧いてきた。

今後この試合のチケットを現地で買う人には、少なくとも販売開始の2時間前には行くことをおすすめしたい。

前に数百人並んでいる可能性はある。

それでも、ビールを飲みながら待てるので、2時間は意外とすぐに過ぎる。

テーガンゼーまでの移動も楽しい

ミュンヘンからテーガンゼーまでは、電車で約1時間半。

Deutschlandticketを利用できたため、追加の交通費を払わずに行くことができた。

ただし、電車を利用するときには一つ注意点がある。

途中で前方と後方の車両が分かれ、それぞれ別の方向へ向かう場合がある。

乗る車両を間違えると、テーガンゼーとは違う場所へ連れて行かれる可能性がある。

車内では案内放送も流れるが、ドイツ語に不安がある人は、乗る前に車両番号や行き先を確認しておくことをおすすめする。

移動時間は長いが、退屈はしなかった。

電車の窓からは、牧場をはじめとした緑豊かな景色が広がっていた。

テーガンゼーに着いてから乗ったバスでは、きれいな山々や湖を眺めながら会場へ向かった。

ミュンヘンの街中とは、まったく違う景色だった。

自然を眺めていると、1時間半という移動時間も、それほど長く感じなかった。

試合当日、目指すは最前列

試合開始は18時。

会場には15時から入ることができた。

私は語学学校で知り合った友達と一緒に、16時過ぎに到着した。

その時点で確保できたのは、前から3列目。

それでも、選手を間近で見られる十分に良い場所だった。

すると、最前列に日本人の親子がいることに気づいた。

思い切って話しかけてみると、

「前、おいで」

と声をかけてくれた。

ありがたく、その言葉に甘えさせてもらった。

話を聞くと、その親子は15時過ぎに到着したらしい。

しかし、その時間でもベンチ側の最前列は、すでに埋まっていたという。

私たちが観戦したのは、ベンチとは反対側の最前列だった。

試合を見るだけなら、こちら側でも選手との距離は十分に近い。

ただし、サインを目的に行くのであれば、ベンチ側のほうがよさそうだった。

私が見た限り、試合後にサインをしに来る選手は、ベンチ側のほうが多い印象だった。

最前列やベンチ側を狙うなら、15時の開場時間に合わせて到着したほうがいいと思う。

スタジアムというより、地元のグラウンド

会場は、一般的に想像する大きなスタジアムとはまったく違った。

地元チームのグラウンドという表現が、一番近いと思う。

バックスタンドに当たる場所には、4段ほどの段差があるだけ。

座席が決められているわけではなく、観戦場所は早い者勝ちだった。

基本的には、みんな立って試合を観る。

選手と観客を隔てる距離も短い。

ピッチ上の声が聞こえ、選手の表情までよく見えた。

アリアンツ・アレーナのような大きなスタジアムでは味わえない近さだった。

会場では、ホットドッグとビールも販売されていた。

価格はアリアンツ・アレーナより安く、味もおいしかった。

自然に囲まれた小さなグラウンドで、ビールとホットドッグを楽しみながらバイエルンの試合を待つ。

試合開始前から、来てよかったと思える場所だった。

若手中心で始まった親善試合

対戦相手のFC Rottach-Egernは、これまでもバイエルンと親善試合を行っているチームだ。

この試合では、ワールドカップを勝ち進んでいた代表選手たちは不在だった。

前半は、若手選手を中心としたメンバーが起用された。

トップチームの主力だけでなく、これからバイエルンで活躍するかもしれない若手選手を間近で見られるのも、親善試合の魅力だと思う。

その中でも、一際輝いて見えたのがカルドーゾだった。

ボールを持ったときの積極性があり、この試合で強く印象に残った選手の一人になった。

サポコのミドルシュートにも痺れた。

後半に入って15分ほどすると、主力選手たちも投入された。

試合は予想どおり、バイエルンが主導権を握り続けた。

ゴールが次々と決まり、最終的なスコアは15対0。

勝敗だけを見れば、試合前からある程度予想できる結果だった。

それでも、トップチームの選手と若手選手を、これほど近い距離から同時に見られる機会はなかなかない。

私にとっては、スコア以上に価値のある試合だった。

パブロヴィッチが、まっすぐこちらへ来た

パブロヴィッチのサイン入りユニフォーム

試合が終わると、選手たちが観客の近くへ来て、サインに応じ始めた。

私たちが観ていた方向へ、パブロヴィッチとビショフが歩いてきた。

その日、私はパブロヴィッチの名前が入ったユニフォームを持ってきていた。

「今しかない」

そう思い、ユニフォームを高く掲げながら、彼の名前を呼んだ。

すると、パブロヴィッチはすぐに気づいてくれた。

そして、ほかの場所へ寄ることなく、まっすぐ私のところへ歩いてきた。

自分の名前が入ったユニフォームを見つけて、本人がこちらへ来てくれる。

ほんの短い時間だったが、今でもはっきり覚えている。

そのユニフォームに本人からサインをもらうことができた。

さらに、ウルライヒからもサインをもらった。

高校3年生の頃、SNSで偶然流れてきた動画を見て好きになったバイエルン。

その選手たちが今、自分の目の前にいる。

ドイツへ来て最初の現地観戦は、想像していた以上に特別なものになった。

初めてバイエルンを観る人にもおすすめしたい

この親善試合の難点は、チケットをオンラインで購入できないことだと思う。

チケット販売日に一度テーガンゼーまで行き、さらに試合当日にも足を運ばなければならない。

ミュンヘンから片道約1時間半。

簡単に行ける距離とは言いにくい。

それでも、行く価値は十分にある。

チケットは公式戦より安く、選手との距離は圧倒的に近い。

若手選手をじっくり見ることができ、運がよければ試合後にサインをもらえる可能性もある。

FC Rottach-Egernとはこれまでも親善試合を行っているため、今後も開催される可能性はあると思う。

バイエルンの公開練習や試合を近くで見たい人には、かなりおすすめできる。

そして、テーガンゼー自体も、とても美しい場所だった。

湖と山に囲まれ、移動中も豊かな自然を楽しむことができる。

サッカーに興味がある人はもちろん、ハイキングや自然が好きな人にもおすすめしたい街だ。

私の現地観戦は、ここから始まった

アリアンツ・アレーナでの公式戦ではなかった。

華やかな演出も、大きなスタンドもない。

観戦したのは、山と湖に囲まれた町にある、小さな地元のグラウンドだった。

それでも、選手との距離は今までで一番近かった。

紙のチケットを手に入れ、ビールとホットドッグを楽しみ、15ゴールを目の前で見た。

そして試合後には、パブロヴィッチが私のユニフォームに気づき、まっすぐこちらへ来てくれた。

ドイツワーホリ最初の現地観戦として、これ以上ない一日だったと思う。

私が思い描いていたドイツでのサッカー生活は、アリアンツ・アレーナではなく、テーガンゼーの小さなグラウンドから始まった。