ドイツへ来て、3か月が経った。
私がドイツへ来た一番の理由は、バイエルン・ミュンヘンを現地で応援したかったからだ。
しかし、実はまだアリアンツ・アレーナでバイエルンの試合を観戦できていない。
それでも、この3か月間、サッカーから離れていたわけではない。
ドイツへ来てすぐにWM26が始まり、ドイツ代表と日本代表の試合を観戦した。そして大会が落ち着いた頃には、バイエルンのテーガンゼーキャンプで行われた親善試合を観に行った。
アリアンツ・アレーナでの観戦とは違う。
でも、ドイツで暮らし始めたからこそできた、忘れられないサッカー体験になった。
ドイツで迎えたWM26
ドイツへ来て間もなく、WM26が始まった。
ドイツ代表の試合は、ビアガーデンやオストバーンのパブリックビューイングで観戦した。
大きな画面の前に多くの人が集まり、ビールを片手に自国の代表を応援する。
いいプレーが出れば、周りから一斉に歓声が上がる。チャンスを逃せば、会場全体からため息が漏れる。
テレビで見ているだけでは分からない、開催地の空気がそこにはあった。
WMの試合の多くは、バイト先で知り合った日本人の友達と一緒に観戦した。
ドイツ代表をドイツで応援する。
それは、日本にいた頃にはできなかった体験だった。
一方、日本代表の試合は、日本食レストランで観戦した。
海外に暮らしながら、同じ日本人たちと日本代表を応援する。
ドイツ代表を応援するときとは、また違う一体感があった。
しかし、結果はドイツも日本もトーナメント1回戦で敗退。
どちらの国も、思っていたより早く大会を去ることになった。
ドイツにいる自分にとっては、どちらも応援したいチームだった。それだけに、WMが急に静かになってしまったようで、少し寂しかった。
WMが終わり、バイエルンの時間が始まった
WM26が落ち着いた頃、次に待っていたのがバイエルンのテーガンゼーキャンプだった。
そこで行われる親善試合を観戦するため、まずはチケットを手に入れなければならなかった。
チケットは、試合の3日前に現地で販売された。
販売開始は14時。
チケットの総数は約2500枚で、一人4枚までという条件があった。
確実に手に入れたかった私は、販売開始の2時間前、12時頃に到着するように現地へ向かった。
「2時間前なら、さすがに大丈夫やろ」
そう思っていた。
しかし、到着すると、すでに私の前には200人から300人ほどが並んでいた。
一人が最大4枚まで買えることを考えると、少し不安になる人数だった。
それでも、並んで待つ時間は思ったより苦にならなかった。
なぜなら、ビールを飲みながら待つことができたからだ。
ドイツで、バイエルンのチケットを買うために、昼からビールを飲みながら列に並ぶ。
それだけでも、少し特別な時間だった。
気づけば2時間はあっという間に過ぎ、無事にチケットを手に入れることができた。
今後この親善試合のチケットを現地で買いたい人には、少なくとも販売開始の2時間前に行くことをおすすめしたい。
それでも前に数百人いる可能性はあるが、ビールを飲みながら待てるので、2時間は案外すぐに過ぎる。
試合当日、目指すは最前列
試合当日のキックオフは18時。
会場には15時から入場できた。
私は語学学校で知り合った友人と一緒に、16時過ぎに会場へ到着した。
その時点で確保できたのは、前から3列目だった。
それでも十分近い。
そう思っていると、たまたま最前列に日本人の親子がいることに気づいた。
思い切って話しかけてみると、
「前、おいで」
と声をかけてくれた。
ありがたく、その言葉に甘えさせてもらった。
話を聞くと、その親子が到着したのは15時過ぎだったらしい。
入場が始まって間もない時間だったが、その時点ですでにベンチ側の最前列は埋まっていたという。
そのため、私たちがいたのは反対側の最前列だった。
試合を見るだけなら、反対側でも選手との距離は十分近い。
ただ、サインを目当てに行くのであれば、ベンチ側のほうが良さそうだった。私が見た限りでは、試合後にサインへ来る選手は、ベンチ側のほうが多い印象だった。
いい場所を確保したいのであれば、15時の入場開始に合わせて行くのがおすすめだ。
スタジアムでは味わえない距離
この親善試合の一番の魅力は、選手との距離だった。
アリアンツ・アレーナのような大きなスタジアムでの観戦とは、まったく違う。
ピッチが近い。
選手の表情が見える。
声も聞こえる。
試合を観戦するというより、選手たちが目の前でプレーしている感覚に近かった。
WMで活躍した選手たちはオフだったため、全員がそろっていたわけではない。
それでも、バイエルンの選手たちをこれほど近くで見られる機会はなかなかない。
そして試合後、さらに忘れられない出来事が起きた。
パブロヴィッチとウルライヒから、サインをもらうことができた。
パブロヴィッチが、まっすぐこちらへ来た
試合が終わり、パブロヴィッチがこちらへ向かって歩いてきた。
その日、私は彼の名前が入ったユニフォームを持っていた。
「今しかない」
そう思い、ユニフォームを高く掲げながら、彼の名前を呼んだ。
すると、パブロヴィッチはそのユニフォームに気づき、まっすぐ私のところへ来てくれた。
そして、自分の名前が入ったユニフォームにサインをしてくれた。
ほんの短い時間だった。
でも、ずっと応援しているチームの選手が、自分の声に気づいて目の前まで来てくれた。
その瞬間は、今でもはっきり覚えている。
パブロヴィッチは、WM26では本来の力を発揮できないまま大会を終えてしまった。
しかし、まだ若く、これからのある選手だ。
バイエルンの中盤は競争の激しいポジションで、有望な選手も多い。
その中でポジションをつかみ続けることは、簡単ではないと思う。
それでも、これからもバイエルンで頑張ってほしい。
本人からサインをもらったことで、今まで以上に応援したい選手になった。
ウルライヒからもサインをもらうことができ、この日は試合を見るだけでは終わらない、忘れられない一日になった。
次はハイデンハイム戦へ
テーガンゼーでの親善試合を終え、次に観戦する予定なのがハイデンハイムとの親善試合だ。
アジアツアー後に行われる試合で、新シーズンへ向けた調整の場になる。
テーガンゼーでは、WMに出場していた主力選手の多くがオフだった。
一方、ハイデンハイム戦では新シーズンを見据え、主力選手も多く起用されるのではないかと期待している。
アリアンツ・アレーナでバイエルンを応援するという夢は、まだ実現していない。
でも、ビアガーデンでドイツ代表を応援し、日本食レストランで日本代表を応援し、テーガンゼーでは手を伸ばせそうな距離でバイエルンの選手たちを見た。
日本にいたら、きっとできなかった体験ばかりだ。
高校3年生の頃、SNSで偶然バイエルンの動画を見た。
あのとき画面の中にいたチームが、今では自分の暮らしている場所のすぐ近くにいる。
ドイツへ来て3か月。
アリアンツ・アレーナでの観戦は、これからだ。
そして、バイエルンの新しいシーズンも、これから始まる。
ここから、私たちのシーズンが始まる。
