ドイツでの生活を始めて、2か月が経った。
英語もドイツ語も、ほとんど話せない。それでも今、私はドイツで暮らしている。
なぜドイツに来たのか。
立派な目標があったわけでも、将来の計画を細かく立てていたわけでもない。
一番大きな理由は、ただバイエルン・ミュンヘンが好きだったからだ。
「この国に住んでみたい」
「バイエルンを現地で応援したい」
そんな気持ちが、すべての始まりだった。
受験勉強中に見た一本の動画
バイエルン・ミュンヘンを好きになったのは、高校3年生の頃だった。
当時は受験勉強の真っただ中。ある夜、勉強の合間に見ていたSNSで、偶然バイエルンの動画が流れてきた。
何気なく見た一本の動画だったが、それをきっかけに私はこのチームを強く好きになった。
あの動画が、後に自分の暮らす国まで決めることになるとは、そのときは想像もしていなかった。
バイエルンを応援するうちに、チームだけでなく、ドイツという国そのものにも興味を持つようになった。
2度の旅行で「住んでみたい」に変わった
これまで、ドイツには2度旅行したことがある。
初めて訪れたのは7年前。目的地は、もちろんミュンヘンだった。
念願だったバイエルンの試合を現地で観戦し、ミュンヘンの街を歩いた。少し足を延ばして、ノイシュバンシュタイン城にも行った。
画面越しに応援していたチームを、実際にスタジアムで応援する。ずっと遠い場所だと思っていたミュンヘンの街を、自分の足で歩く。
その経験で、ドイツは一気に身近な存在になった。
2度目に訪れたのは3年前。
このときはフランクフルトとシュトゥットガルトを訪れ、クリスマスマーケットを楽しんだ。
街に並ぶ屋台やクリスマスの飾り、冬の空気の中で過ごす時間。そこでしか味わえない景色に触れ、ドイツの街と文化にさらに惹かれていった。
一方で、ひとつ心残りもあった。
ドイツを代表する祭り、オクトーバーフェストをまだ体験していなかったことだ。
バイエルンの試合を観て、美しい街を歩き、クリスマスマーケットにも行った。それでも、まだ知らないドイツがたくさんある。
旅行で訪れるだけではなく、この国に住み、季節ごとの文化や日常をもっと近くで味わってみたい。
そう思うようになった。
コロナで実現しなかった留学
もともと、海外で暮らすことには憧れがあった。
大学時代には留学を考えていたが、ちょうど新型コロナウイルスが流行し、実現できなかった。
仕方がなかったとはいえ、「海外で生活してみたい」という気持ちまでなくなったわけではない。やり残したこととして、心のどこかに残り続けていた。
大学を卒業するとき、両親から言われた。
「まずは3年間、社会に出て働いてから好きなことをしろ」
それなら、まずは3年働こう。
そう思って社会人になり、本当にぴったり3年間働いた。そして3年が経ったタイミングで、ドイツへワーキングホリデーに行くことを決めた。
「バカ息子が何か言っている」から始まった
初めてドイツへ行きたいと伝えたとき、両親はきっと「バカ息子が何か言っている」くらいにしか思っていなかったはずだ。
当時の私は、まだ具体的な計画を見せられていたわけではない。
英語もドイツ語も話せない息子が「ドイツに住みたい」と言い出しても、本当に実行するとは思わなかったのかもしれない。
それでも、私は何度もドイツへ行きたいと伝えた。
繰り返し話すうちに、両親の反応も少しずつ変わっていった。
「行きたいなら、行けば」
最後には、そう言ってくれるようになった。
3年間働くという約束を守ったことで、本気だと分かってもらえたのかもしれない。
言葉はできない。でも、行きたかった
もちろん、不安がなかったわけではない。
私は英語もドイツ語も、まったくと言っていいほど話せない。
そんな状態で、本当に海外で生活できるのか。仕事は見つかるのか。言葉が通じない中で、手続きや買い物を一人でできるのか。
考え始めれば、心配なことはいくらでもあった。
それでも、不安より「行きたい」という気持ちのほうが大きかった。気づけば、ワーホリの準備を進めていた。
当時の私は、たぶんこう言っていた。
「まあ、なんとかなるやろ」
「なるようになるさ」
「Let it be」
十分な語学力が身についてからでも、完璧な計画ができてからでもない。
ただ、行きたかった。
その気持ちだけで、ドイツへ来ることを決めた。
出発の日はワクワク、到着した瞬間は……
出発当日、不思議と不安はなかった。
これから言葉の通じない国で暮らすというのに、感じていたのはワクワクばかりだった。
高校3年生の夜、受験勉強中に偶然見た一本の動画。
そこからバイエルンを好きになり、2度の旅行を経て、いつかドイツに住みたいと思うようになった。
そして今、自分は本当にドイツへ向かおうとしている。
「ついに夢が叶う」
出発の日は、ただそのことが嬉しかった。
しかし、ドイツに到着して現地の言葉を耳にした瞬間、最初に思ったことはこれだった。
「やべぇ、何言ってっか、さっぱりわかんねぇ(笑)」
分かっていたつもりだった。自分は英語もドイツ語も話せない。それでも何とかなると思って、日本を飛び出してきた。
ところが、空港で飛び交う言葉を実際に耳にすると、本当に何を言っているのか分からない。
夢が叶ったという高揚感と、とんでもない場所に来てしまったかもしれないという感覚。
その両方を抱えながら、私のドイツ生活は始まった。
夢が叶った後、考え始めたこと
来る前は、ドイツへ行くこと自体がひとつの目標だった。
しかし、実際にドイツへ来てみると、その先のことを考えるようになった。
これから自分は、何を目標に生きていくのか。
このままドイツで暮らしていきたいのか。それとも、いつか日本に戻ることをゴールにするのか。
そんな答えの出ないことを考え、悩む夜もある。
「ドイツに住みたい」という願いは叶った。でも、実際に住み始めたからこそ、次の目標が必要になったのだと思う。
まだ2か月しか経っていない。今すぐ答えを出す必要はない。
ドイツでさまざまな経験をしながら、自分がどこで、どのように生きていきたいのかを少しずつ見つけていきたい。
「行きたい」だけで来たドイツで
私がドイツを選んだ理由は、とても単純だ。
サッカーを通してドイツを知り、2度の旅行で街と文化に惹かれ、バイエルン・ミュンヘンを現地で応援したいと思った。
大学時代に実現できなかった海外生活への思いも、ずっと心の中に残っていた。
言葉もできない。
明確な将来設計があったわけでもない。
それでも、「行きたい」という気持ちだけは本物だった。
ドイツへ来た選択が正しかったのかは、まだ分からない。この先、どこで何をして生きていくのかも決まっていない。
だからこそ、このブログでは、楽しい出来事だけでなく、困ったことや失敗したこと、迷いや不安も含めて記録していきたい。
ドイツで暮らして初めて気づくこと。ドイツの良さ、日本の良さ、そして自分自身の変化。
そうした一つひとつの発見を、このブログに残していく。
高校3年生のときに偶然見た、一本の動画。
そこから始まった夢は、7年の時間を経て現実になった。
さて、これからどうなるのか。
とりあえず今は、ドイツへ来る前の自分が言っていたように。
まあ、なんとかなるやろ。
なるようになるさ。
Let it be.
